生活
2020.05.20 2020.08.20
「社会的距離」時代のスモールビジネス戦略
「社会的距離」時代のスモールビジネス戦略
「社会的距離」時代が到来しました。 これまでスモールビジネスの常識と考えられてきたことも、大きく変わることが予想されます。 いっぽうで、そんな中でも変わらずに残っていくものもあるでしょう。
コロナ後の変化を予測するのは大変難しいことですが、今回は、これからの「社会的距離」時代のスモールビジネス戦略を
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ステージ①警戒期
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ステージ②緩和期
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ステージ③忘却期
の3ステージに分けて、考えてみることにします。
ここで重要なことは、
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ステージ①はステージ②の準備
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ステージ②はステージ③の準備
だということです。
ステージ①警戒期
どのくらいの期間を「ステージ①」と呼ぶかは何とも言えませんが
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感染に対する強い警戒心
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減退している消費意欲
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行動自粛ムード
このような特徴を持つ期間のことを「ステージ①」と呼ぶことにします。
緊急事態宣言が若干ゆるやかになった感自粛要請が出ていた頃の雰囲気が、ここでいう「ステージ①」にあたります。 この「ステージ①」の状況は長くは続かないでしょう。
なぜなら
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感染者数の「増え方」は減少していくと思われる
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緊張感を長期に維持するのは容易ではない
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いつまでも経済にブレーキをかけ続けるわけにはいかない
このような動きになるだろうからです。 厳しい期間(ステージ①)は、おそらく短期間で終わるものと考えられます。
短期間とはどのくらいの期間なのか、これも予想ではありますが、緊急事態宣言が終わってから1~2ヶ月先までと考えられます。
ステージ①の戦略としては、まず、下記の3つのポイントを押さえる必要があるでしょう。
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感染リスクを下げての販売方法
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ロイヤルカスタマーとのコミュニケーション
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オンラインでのマーケティング
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応援型のマーケティング
感染リスクを下げての販売方法
方法としては、
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オンラインへのシフト
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ダイレクトメールの活用
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宅配へのシフト
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営業時間短縮
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早朝販売や深夜販売を始めてみる
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予約制を取り入れてみる
などが考えられます。
基本的にオンラインへのシフトには感染リスクはありませんし、ダイレクトメールの活用、宅配へのシフトも、感染リスクは非常に低いと言えるでしょう。
営業時間短縮は社会的距離の近い時間を減らすことになるため、感染リスクが下がります。 早朝販売や深夜販売は、人の少ない「時間的なニッチ市場」を狙うことと同じですが、これも社会的距離の近い時間を減らすことになります。
予約制にすることで
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来客人数に制限をかける
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1度に1組限定などの営業にする
ということができるようになります。
とはいえ、営業時間短縮、早朝販売・深夜販売・予約制といった手法には、人による「接客」が介在します。 ここで社会的距離に配慮した環境づくりを徹底することで、顧客の共感を得られるようにしましょう。
社会的距離に配慮した環境づくりの例としては
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顧客間の距離を保つ
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顧客とスタッフ間の距離を保つ
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スタッフ間の距離を保つ
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換気をよくする
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店内・事務所内でのマスク着用ルール
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消毒ポンプの設置
などがありますね。
さらに、ひと工夫して、「会話が減るような商談方法」を考えてみるのも良いでしょう。 極端な話かもしれませんが、「筆談」を採用するのも、この時期なら好意的に受け止めてもらえる可能性があります。
ロイヤルカスタマーとのコミュニケーション
ステージ①では、新規の顧客開拓よりも、
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常連客とのコミュニケーション
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馴染みのある地域での営業活動
に重点を置くことをお勧めします。 なぜなら、感染リスクを下げての販売方法はは顧客との接触時間が短くなる(あるいはなくなる)ため、新規顧客の獲得が難しくなるからです。
むしろ
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常連客
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来店経験のある顧客
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(百歩譲って)問合せのあった顧客
に限定し、密なコミュニケーションを図るほうが効率的です。
オンラインでのマーケティング
ステージ①では常連客とのコミュニケーションが大事、と書きましたが、ここでいう「コミュニケーション」とは、おもにオンラインでのそれを意味します。 すなわち、メールやSNSを利用するマーケティングです。
メールやSNSを利用するマーケティングは今に始まったものではなく、珍しいものでもありませんが、重要なのは、 「これまであまりメールやSNSを利用するマーケティングをしてこなかった人にとって、いよいよ、やらざるを得ないときが到来した」 ということです。
これまで対面のトークで結果を出してきた人も、この御時世、オンラインでのコミュニケーションを頑張らなくてはなりません。 メールやSNSを利用するマーケティングでは、
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情報発信の頻度を高めること
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魅力的なコンテンツをアップすること
がとても大切です。 「自粛ムードが去ったら店に行こう」と顧客に思ってもらえるような、見続けてもらうコンテンツをアップしていくことが重要なので、コンテンツ作りには手を抜けません。
応援型のマーケティング
この時期は、
「みんなで頑張ろう」 「飲食店を応援しよう」 「食品ロスをみんなで防ごう」
などのスローガンに関係した、「応援型のマーケティング」が向いています。
応援型のマーケティングは、
「とくに欲しくないけれど、人助けのために買う」 「買うことで、人とつながることができる」
という購買動機に訴えるものです。
ステージ②緩和期
次に来るのが「ステージ②」の時期です。 ステージ②とは、
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自粛ムードに「出口感」が出てくる
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感染者数が明らかに減少する
という状況になり、人々の外出への警戒感が薄まる時期を指します。
おそらく政府や自治体からも
「感染予防対策をしたうえで、ビジネスを再開してもよい」
といったアナウンスが出るでしょう。 ステージ②は1年半程度、続くのではないかと思われます。
ウイルスが急激に消滅することは考えられませんので、消費者は外出したり飲食店に入ったりしながらも、この時期を警戒を緩めながら「おそるおそる」過ごすことになるでしょう。
「感染は避けたい」けれども「自粛にも我慢できない」。
相反する心理の葛藤が起き、最終的に「自粛に我慢できない」気持ちのほうが勝り、警戒のバーを下げる段階に突入していくものと思われます。
この時期にとるべきスタンス
「ステージ②」でも、引き続き
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感染リスクを下げての販売方法
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オンラインでのマーケティング
が求められます。 したがって前述の「ステージ①」の時期を通じ、この2つのスタンスが「身について」いるかどうかがこの時点での明暗を分けます。
ステージ①で何もせず、いきなりステージ②で「感染リスクを下げての販売方法」「オンラインでのマーケティング」を始めても、すぐには身につかないノウハウなので、加減が分からないまま、失敗を繰り返してしまうはずです。
しかし、ステージ①のフェーズで「感染リスクを下げての販売方法」「オンラインでのマーケティング」に「慣れた」個人事業主やビジネスオーナーは、「ステージ②」でも継続して戦っていけるはずです。
この時期の対策
前述のように、応援型のマーケティングは、
「とくに欲しくないけれど、人助けのために買う」 「買うことで、人とつながることができる」
という購買動機に訴えるものですが、ステージ②では、このやり方は通用しにくくなります。 なぜなら、応援する必要がだんだんなくなってくるからです。 したがって、ステージ②では、顧客の悩みを解決する商品やサービスに「戻す」必要があります。
また、ステージ①ではロイヤルカスタマーとのコミュニケーションが大事でしたが、ロイヤルカスタマーの購買意欲にも限界があります。 したがってステージ②では、新規顧客の獲得も重要となります。
ステージ③忘却期
最後は「ステージ③忘却期」です。 ワクチンの完成または集団免疫の獲得により、ウイルス禍が終息し、人々が自由に行動できるようになったあとの世界です。
「この日を境にウイルス禍が消失した」というような、明確な線引きはおそらくありません。
ステージ②の時期がだらだらと続き、そういえば誰も「コロナ」だの「ステイホーム」だの「社会的距離」だの言わなくなっており、感染のニュースも出なくなった…。
「喉元すぎれば熱さを忘れる」そういう終わり方、フェイドアウトをするのではないでしょうか。
気がついたらステージ③に移行していた、ということになるでしょう。 ただし、「社会的距離を保つ」という「癖」は、残っていくものと思われます。
さて、世間のムードは徐々に変化すると思われますが、需要の変化(回復)は急に起きる可能性があります(※)。 過去の例を振り返ると、14世紀にヨーロッパでペストが流行しましたが、その流行が終焉した後には需要が急回復したそうです。 したがって、今回も、「需要の急回復はあるかもしれない」と想定しておくことは、決して無駄ではないはずです。
せっかく需要が回復したのに、自分のビジネスだけがその恩恵を受けられない、という事態は避けたいものです。
機会損失に備える
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需要が急回復したのに、売る商品がない
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需要が急回復したのに、人手不足などでサービスが提供できない
といった「機会損失」にならないよう、手を打っておきましょう。
評判を守る
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あわてて商品を粗製乱造した結果、顧客からクレームがきた
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人手不足なのに無理にサービスを提供した結果、顧客とのトラブルが起きた
こうした「評判を落とす」結果にならないよう、準備しておきましょう。
戦力を維持する
ステージ①の時期に悲観的になり、スタッフを解雇するなどの戦力「縮小」をしてしまうと、あとでステージ③の時期に人手不足に直面することになります。 そうならないため、「縮小」には慎重になることを推奨します。
リーマンショックで多くの建設会社が人員削減をしましたが、数年後に建設需要が高まった際、それらの会社は需要に対応できませんでした。 いっぽう人員削減をせずに頑張った会社は、建設需要に対応することができました。 このことを教訓としたいと思います。
オンラインでのマーケティングを深める
需要の急回復を想定することは大切ですが、「注文」の多くはオンラインからやってくるでしょう。 ステージ①、②を通じ、人々の購買行動も(感染リスクを心配しなくてよい)オンラインへのシフトが進んでいるからです。
したがい、
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オンラインでのマーケティングをしているところには「注文」が急激に来る
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そうでないところには「注文」が来ない
という、「ビジネス格差」が生まれてくることが想像できます。
オンラインでのマーケティングは、「コミュニケーション技術」面でも、「IT技術」面でも、日に日に進歩しています。
あとから慌てて対策を立てても、先に進んでいる競合に追いつくのは容易ではありません。 その意味で、対策は早いうちに、できればステージ①にいる今のうちから立てておくことが大切なのです。
(※)欧州では、ロックダウンが緩まった都市で消費が急回復する現象もすでに起きているようです。
まとめ
ステージ①は警戒期、すなわち「感染に対する強い警戒心」、「減退している消費意欲」「行動自粛ムード」をキーワードとする時期です。 この時期のスモールビジネスのポイントは、
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感染リスクを下げての販売方法
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ロイヤルカスタマーとのコミュニケーション
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オンラインでのマーケティング
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応援型のマーケティング
この4点です。
ステージ②は緩和期、すなわち人々の外出への警戒感が薄まる時期です。 この時期のスモールビジネスのポイントは、
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感染リスクを下げての販売方法(継続)
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オンラインでのマーケティング(継続)
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応援型から通常型への「戻り」
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新規顧客の開拓
この4点です。
ステージ③は忘却期、すなわち人々が自由に行動できるようになったあとの世界です。 この時期のスモールビジネスのポイントは、
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需要の急回復に備える
です。
なお、「ステージ③」で需要の急回復に備え、ビジネスを続けていくためには、その前の「ステージ②」の戦略が不可欠であり、さらにそのためには、前段階の「ステージ①」の戦略が必要ということになります。
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